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日本:総住宅数の1割以上…空き家問題、なぜ深刻化?国と地方が法整備等で対策へ本腰


総住宅数の1割以上…空き家問題、なぜ深刻化?国と地方が法整備等で対策へ本腰

地方が法整備等で対策へ本腰

Business Journal 2014/11/12 06:00 安積明子/ジャーナリスト

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少子化や過疎化に伴い、空き家が増加している。総務省の統計によれば、2013年の総住宅数は5年前から305万戸増加して6063万戸。空き家数は820万戸にも上る。空き家率は実に13.5%と、過去最高を記録した。空き家率が最も高い都道府県は17.2%の山梨県。以下、愛媛県の16.9%、高知県の16.8%、徳島県と香川県の16.6%と、高順位に四国4県が続いている。 「一刻も早く、対策を打たなければなりません」。こう危機感を募らせるのは自民党の大野敬太郎衆院議員だ。大野氏は香川3区選出で、小泉政権で防衛庁長官を務めた大野功統氏を父に持つ。地元を歩いていても、空き家は目立っていると話す。  全ての家屋を別々の人が所有しているわけではない。中には複数の住宅を保有している人がいる。彼らがそれらの物件をきちんと第三者に賃貸できていれば「空き家」にはならないが、人が住まないまま放置されている住宅が増加しているのだ。そのような建物は劣化が進み、資産価値が下がり、ますます人が住まないという悪循環に陥っていく。いっそのこと取り壊すべきなのだが、解体するにも費用がかかる。  さらにネックになっているのは税制上の問題だ。更地にすると、固定資産税が最高で6倍にも増額してしまうこともある。駐車場などとして利用して経済的な利益を得ることができるなら別だが、何も活用できない不動産なら、所有者にとっては建物を壊さないまま放置する方が安上がりということになる。だが管理のされていない空き家は周囲の景観を損ねてしまうばかりか、屋根や壁が崩落する危険があるし、ゴミの不法投棄場や、放火・不法侵入など犯罪の温床にもなりかねない。  もちろん現行の建築基準法によれば、著しく保安上危険または衛生上有害な建築物については、所有者や管理者に除去や修繕などの必要な措置を命じることができる。所有者が履行しない場合は代替執行も可能としている(第10条)。しかしその要件は明確ではなく、除去も最小限にとどまる。 「これまでの法律は建物を造ることを中心に考えていて、壊すことはあまり考慮しなかった。それが空き家問題の根本的な原因です」  問題の根源に法整備の不備があると大野氏は述べる。

●動きだす行政  もちろんこれまで行政も、手をこまねいていたわけではない。昨年10月現在で272の自治体が条例を制定し、空き家問題に対処しようとしている。その先駆けになったのが埼玉県所沢市だ。  同市は10年に「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」を作成。「危機管理課防犯対策室」を担当部署とし、勧告に従わない場合は所有者の氏名を公表し、最終的には警察も出動し撤去可能とした。

国政も動いている。自民党と公明党は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を国会に上程する予定だ。その法案の概要は以下の通りである。  1.国土交通大臣と総務大臣が基本方針を策定  2.市町村は基本方針に即した空き家対策計画を策定し、協議会を設置  3.都道府県は市町村に技術的な助言を行い、市町村間の連絡調整を行う  画期的なのは、まず市町村長に立ち入り調査権限を認めた点。また保安上危険であったり、著しく衛生上有害であったり、著しく景観を損なうなど放置するのが不適切な空き家を「特定空家」と指定し、要件を緩和した行政代執行による強制執行が可能である点が注目される。そして地方交付金制度の充実など、財政面での支援も盛り込んでいる。  同法案は今年初めの通常国会で可決される見通しだったが、諸般の事情で臨時国会まで持ち越されている。早期の成立が望まれる。

●空き家を有効活用する取り組み  ただ、この法律だけでは十分ではない。空き家の処置は原則として「権利者」が行うが、所有者が不明だったり権利関係が複雑だったりする場合はその処置が難しい。10月13日付毎日新聞は、戦後の混乱期に建てられ、所有者不明の空き家が、自治体にとって問題になっていることを報じている。  もっとも撤去せずに空き家を有効活用できればそれが一番よい方法であり、建物解体により生じる産業廃棄物を減らすこともできる。 「選挙区を歩いていると、都会から移住してきた人を見かける。古民家をうまくリフォームして、自分の生活を楽しんでいる。現在の賃貸借は契約終了後の原状回復義務などが厳しいが、これを緩和すれば古民家などを自由に改造することができる。そして現状のままに所有者に返せばよい。そうなれば、古民家を借りようという人も増えるのではないか」(大野氏)  空き家をめぐる現状は厳しいが、さまざまな解決方法が模索されている。大野氏が述べる賃貸借制度の改正の他、空き家の賃貸や売却を希望する所有者から情報提供を受け、登録した物件を利用希望者に紹介する制度、いわゆる空き家バンクなどもある。この仕組みに積極的に取り組む自治体も増えている。  これまでの生活のあり方自体を見直す方法もある。かつて主張されたデュアルライフ構想だ。週末にセカンドハウスに住むというこの方法は、多様なライフスタイルを実現することにもなる。そのための法整備が望まれる。


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